「早生まれは学年の年少にあたるから不利だ」という言葉を聞いたことがありますか?
児童生徒の学年については、学校教育法で定められており、一学年は4月2日生まれから翌年の4月1日生まれの児童生徒までで構成されることになっています。
当然ながら1つのクラスに体や脳の発達が1年近く差がある児童が共存するわけですが、果たして早生まれは不利で、遅生まれが有利なのでしょうか。
結論から書くと「医学的観点」と「統計学的観点」から、両者には驚くほど差があるという結果が出ています。
では街の人々は、早生まれと遅生まれにどのようなイメージを持っているのでしょう。
まずはじめに「大人になった今、早生まれと遅生まれについてどう思っているか?」その声をいつか紹介します。
私は早生まれだけど、学力や年収に不満はない。むしろ、早生まれだからこそ努力したし、自分の能力を信じてチャレンジした。早生まれや遅生まれにこだわらず、自分の人生を楽しむべきだと思う。
遅生まれは有利だと思わない。小学校の時は周りより背が高くて目立って嫌だったし、勉強もできると思われてプレッシャーを感じた。大人になっても年収が高いとは限らないし、人生はそんな単純なものじゃない。
早生まれでも遅生まれでも関係ないと思う。小学校の時は遅生まれの友達と仲良くやっていたし、勉強も普通にできた。大人になっても年収は平均的だし、幸せに暮らしている。個人差があるから一概には言えないと思う。
遅生まれの方が有利だと思う。小学校の時はリーダーシップを発揮できたし、勉強も得意だった。その流れで大人になってからも年収が高いほうだし、キャリアも充実している。早生まれよりもメリットが多いと思う。
早生まれでも遅生まれでもメリットとデメリットがあると思う。私は早生まれだけど、小学校の時は体が小さくて可愛がられたし、勉強も努力した。大人になっても年収はそこそこだけど、自分のやりたいことをやっている。遅生まれの友達もそれぞれ良いところがあると思う。
どうやら小学校までは身体的・学力的にそれなりに差を感じていた人が多いようですが、大人になるにつれてその差を感じる人と感じない人で意見が分かれているようです。
ちなみに「早生まれ・遅生まれ」の本来の意味は「早生まれ=1月1日から4月1日に生まれた」「遅生まれ=4月2日から12月31日に生まれた」です。
つまりは早生まれ以外は全員遅生まれになるのですが、一般的には「遅生まれは4月や5月に生まれたこと」と考えているケースも多いようですね。
医学的観点からみて、早生まれと遅生まれの差はあるのでしょうか。
ある専門家は「医学的にみると、早生まれと遅生まれは、極端にいうと11か月も違うわけで、実際に、4歳0か月と4歳11か月だと、体重も約3キロ、身長も約5センチ違います。かなり体格的な差はあって、体育の授業などでは差が出てくるでしょう」と説明します。
アメリカでは、プロスポーツ選手で早生まれと遅生まれの選手を比べてみると、遅生まれの人の方が年俸が良いというデータもあるようです。大人になってからも早生まれの影響で差が出るということですね。
このようなデータを知って、中にはあえて遅生まれ(とくに4月生まれ)になるようにするというすごく教育熱心なお父さんお母さんもいるのだとか。
さらに、統計学の観点から見ると、早生まれと遅生まれの差は明確です。
ここからは「東京大学大学院経済学研究科 山口慎太郎 教授」の研究結果とその意見を紹介します。
「高校の偏差値でみると、早生まれの子が入る学校の平均的な偏差値と4月生まれの子どもの偏差値を比べると4.5もの差があるということが分かりました」
さらに、
「小学4年生から中学3年生までの子どもたち約100万人のデータを分析し、学力テストから『認知能力』を、同時に行われたアンケートから『非認知能力』を調べた結果、どの学年で比べてみても、遅生まれの子どもほど成績が良い傾向がある」とのことです。
そして実は、早生まれの子どもたちほど勉強時間が長くて塾に通っている傾向があるのだとか。
これについては
「おそらく、早生まれの子たちの不利というのは色々言われているので、親御さんがその不利を補うように勉強時間を増やしたり、塾に通うというのをやっているんじゃないかと思います」とのこと。
その結果、習い事、スポーツとか音楽とかの活動があまりできていない、つまりスポーツや芸術など「非認知能力」を伸ばすような活動が不足している可能性は否定できません。
大人になってからも、30歳~34歳の年収で比べると、早生まれと遅生まれでは年収が4%違うというデータもあり、その影響が将来の所得や就業率の低さにつながりかねないといいます。
統計的には、早生まれは完全に成長しきってからも違いが残るということですね。
「こういった違いは本人に全く責任がない。いつ生まれたかというのは、ほぼ偶然の産物であるわけです。そういった問題に対して何もしないというのは、やはり不公平だろうと考えています」とも述べています。
制度的に困難なことが多いですが、希望者には早生まれの場合は1学年後に就学就園できるようにしたら良いという提言をされているようです。
早生まれによって子供の頃の身体や学力の差は仕方のないことかもしれませんが、大人になってまで、ましてや収入の面にまで影響を及ぼすというデータは興味深いですね。
これは親御さんが「早生まれは不利」というレッテルを貼って、その不利を克服しようとする教育や行動がかえって早生まれを不利にしているという本末転倒な現象とも言えるでしょう。
早生まれは不利というデータはあっても兄弟の構成や家庭環境によって精神年齢や非認知能力は変わるので子ども一人一人の特性を見るということが大切なのかもしれません。